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2026年 7月3日(金) 現地開催
「JaSST in Osaka」から「JaSST Kansai」へ改称されてから20周年の節目となる本イベントは、7月3日にグランフロント大阪で開催された。「シン・ソフトウェアテスト~新時代に築き直すソフトウェアテストの入門・基礎」をテーマとし、会場には150名を超える参加者が集まっていた。
「シン」には、以下の3つの意味が込められている。
筆者が本イベントへ参加した理由は、この「シン」の定義に重なる以下の2点を持ち帰りたかったためである。
基調講演・招待講演・各セッションでは、それぞれの「シン」の視点からAIとの協働やテストの本質が語られた。
本セッションでは、AI時代におけるQAの学習戦略について語られた。昨今、生成AIの台頭により、テスト業務の効率化が進んでいる。その結果、QAエンジニアは、品質目標を定義しAIの出力を評価・監督する、高度なAI活用型QAエンジニアへのスキルアップが求められている。
スキルアップに必要なのは、AIを活用しなければならないという義務感ではなく、試したいという「ワクワク」した気持ちを、「AIと遊ぶ」ことによって継続的に学び続けるアプローチであると述べられた。そのためには、AIの出力を評価するための基礎理論を身に付け、生成AIへの指示力やレビュー力を高めることが求められる。さらに、開発全体を俯瞰した仕様確認や、組織として安全性と信頼性を担保するルールを整備することも必要になる。
AIをパートナーとして試行錯誤を重ねながら活用していく姿勢が、継続的に価値を発揮するAI活用型QAエンジニアにつながると締めくくられた。
AIを活用することが求められる風潮が広がり、QAに関するイベントでもAIをテーマとしたものが近年急速に増えている。そのような中で、今回の「AIと遊ぶ」という考え方は新鮮であった。これまでは業務効率化のみに焦点が当たりがちであったが、本質的に重要なのは「何を試したいか」という自身の探求心であると理解した。自分が興味を持ったことを、AIとともに試行錯誤することは確かに「ワクワク」しそうである。
私は本セッションを聴講するまでは、基礎を理解し、自分で実践できるようになってからAIを活用すべきだと考えていた。そのため、基礎学習への負担を感じると、学習そのものが止まってしまうこともあった。振り返ってみると、自ら学習を始めるハードルを必要以上に高くしていたと気づいた。まずはAIと一緒に試し、その出力を起点に基礎に立ち返り、理解を深めるというプロセスは、私にとって非常に取り組みやすい学習方法であると実感した。インプットを十分に行ってからアウトプットするという考え方にとらわれる必要はないことに気付けた点は、大きな学びであった。
今後は、AIをパートナーとして活用し、試行錯誤を重ねながら知識や経験を積み重ねていきたい。
本セッションでは、生成AIの活用にこそ、テスト設計の本質である「説明性」を高める重要性が説かれた。テスト開発(テスト分析・テスト設計・テスト実装)プロセスを通じ、情報を段階的に詳細化しながらテストケースを導出する。このプロセスが、納得感のあるテストにつながる。特に鍵となるのが「テスト分析」である。
テストベースは、テストを目的として記載されていないため、テストにおいて必要な情報が不足していることが多い。これを、モデル化、構造化して再整理することで、全体像の俯瞰や利害関係者との合意形成、テスト設計技法の選定が容易になる。
生成AI時代においても、担当するプロジェクトやプロダクトに適した形で、プロセスを設計していくことが、説明性の高いテストを実現するために重要である。人間が判断基準やプロセスを明示することが、生成AIとの協働における土台となると語られた。
私は普段からテストベースを整理し、モデルを用いた構造化を行ってきた。しかし、本セッションへの参加を通じて、テストベースを構造化する本来の目的について新たな気付きを得ることができた。
これまでは、構造化することで自分自身が仕様を理解し、納得できる状態を作ることを主な目的として考えていた。しかし、本来の目的は自分が理解することだけではなく、利害関係者が同じ認識を持ち、納得できる状態を作ることであると理解した。
「テストはコンテキスト次第」であり、絶対的な正解は存在しない。そのため、根拠を分かりやすく示し、合意形成につなげるための「説明性」を意識したテスト設計が求められると理解した。今後は、自分が理解するための構造化に留まらず、利害関係者が説明を受けて納得できる構造化を意識したテスト設計に取り組んでいきたい。
本ワークショップでは、風間氏をはじめとしたWACATE実行委員が主催となり、具体的な演習を通じたテスト設計技法の習得が行われた。
以下の3つのテスト設計技法が題材になった。
ワークショップの流れは以下の通りである。
チーム内では、参加者がどのような意図を持ち、どのような基準でテスト設計技法を適用したかが共有され、活発な意見交換が行われていた。単なる技法の習得に留まらず、他者の視点を取り入れることで、自身の「わかったつもり」を解消する構成となっていた。
今回のワークショップでは、特に「同値分割法」が印象に残った。同値分割法は、重複なく網羅的に入力値を分類する、基本的なテスト設計技法である。そのため、自分の中では比較的共通の考え方になるものだと思っていた。しかし、グループでワークの結果を共有すると、同じ題材を扱っていても分類の仕方や着眼点は人によって大きく異なっていた。その違いを参加者同士で議論できたことは、ワークショップならではの学びであった。
この経験から、テスト設計技法は単にテストケースを導き出すための手法ではなく、自分の考え方や分類の根拠を他者に説明し、認識の違いを議論するための共通の土台として機能すると実感した。今回得た学びを、日々のテスト設計にも取り入れ、説明性を意識した議論につなげていきたい。
本招待講演では、AI時代のQA組織に求められる、仕組みづくりについて紹介された。AIを効果的に活用するためには、業務の「型(標準プロセス)」と「ナレッジ」を整備し、継続的に学習する仕組みを構築することが必要であると説明された。
事例として、フリー社ではAI導入以前から標準化されたプロセスと、チームごとのコンテキストを整備することで、人とAIの判断基準を揃えている。その土台のもとで、AIエージェントがQA活動を行うための基盤(AI駆動QA基盤)である「AIQA(アイカ)」を活用し、構造化されたQA活動を推進している。
また、現場への定着を目的とした学習の場や、まず成果を体験してから基礎を学ぶ「いきなりサビ」という学習手法も紹介された。こうした取り組みを通じて、現場で得られた知見を標準プロセスへ継続的に反映し、仕組みを改善し続ける「学習し続ける組織」であることが、AI時代のQA組織には重要であると述べられた。
フリー社の事例から、AI活用を支えているのは、AIそのものではなく、「型」や「ナレッジ」を、継続的に整備する仕組みであることを学んだ。成功事例だけでなく、試行錯誤の過程も共有し、その知見を組織の「型」に反映し続ける姿勢が印象に残った。
日々の業務では、新しいツールや活用方法に目が向きがちである。しかし、その前提として、人とAIが同じ判断基準で業務を進められるよう、「型」と「ナレッジ」を整備することが必要だと感じた。自分自身も業務の忙しさを理由に、このような土台となる整備を後回しにしてしまうことがあった。ただ、AIを効果的に活用するためには欠かせない取り組みであると改めて認識した。
今後はAIを利用するだけではなく、自身の業務を標準化し、日々の気付きや改善点を反映させながら、継続的に自身の「型」を育てていくことを意識して取り組みたい。
次回のJaSST'27 Kansaiでは、ワークショップをさらに充実させる予定であることが紹介された。ワークショップが増えることで、より多くの学びや、参加者との交流が得られることを期待したい。
最後は、JaSST関西実行委員会が作成した、オリジナルソングの披露で締めくくられた。
JaSST'26 Kansaiでは、「シン・ソフトウェアテスト~新時代に築き直すソフトウェアテストの入門・基礎」をテーマに、3つの視点からAI時代のQAについて学びを持ち帰ることができた。
これらの3つに共通していたのは、まずAIを活用して試し、その結果を基に基礎を学び、再び試行錯誤を繰り返すという「学びのサイクル」である。このサイクルを継続することが、AI時代における成長につながると感じた。
今回のJaSSTを振り返ると、印象に残ったのは講演内容だけではない。ワークショップや参加者との交流を通じて、自分とは異なる考え方や経験に触れられたことも、大きな学びであった。私自身も、社外コミュニティへ参加したことがない方とQA界隈をつなぐ活動に携わっている。そのため、知識を得るだけでなく、人との交流を通じて新たな視点を得られることも、コミュニティの大きな価値だと考えている。
JaSSTへの参加は今回が初めてであり、参加前は少なからず緊張していた。しかし、実際に参加すると、基調講演・招待講演・各セッションから多くの学びを得られただけでなく、参加者との交流を通じて新たな気付きも得ることができた。この経験を通じて、JaSSTは知識を得るだけでなく、人とのつながりや新たな視点を得られる場であることを改めて認識した。そのため、これまでJaSSTへ参加したことがない方にも、ぜひ一歩踏み出してほしい。新たな学びや人とのつながりを得るきっかけになると感じている。
記:野末一馬